2017/09/02 00:20


昨年、お客様から頂いた質問のなかに

〈二つ購入したうち、1つの石鹸の泡に粘り気があるのですが〉

というものがありました。

ひとつの石鹸は果実とクレイ、オイルにマカダミアナッツオイルを配合し
もう一つの石鹸はオリーブと月桂樹の葉をオリーブオイルに浸した
インフューズドオイル主体のマルセイユ石鹸。

使用した植物もオイル配合も全く異なる石鹸、
そういわれると何となくマルセイユ石鹸の泡に粘りがあるような気がしたけれども

オリーブオイルひとつとっても
グリーンの色と香りが濃いエキストラバージンオイル
ソフトな香りのエキストラバージンオイル
色や香りがつかない ピュアオリーブオイル
三種類を、石鹸の個性に合わせて使い分けていました。

材料のオイルは購入後3か月以内に使い切るので、オイルの劣化ということも考えづらく

原因がオイルにありそうだと思いながらも、はっきりわからないまま、一年近く経過し
ようやくフィトケミカルについて書かれた文献のなかに

〈粘液質(多糖類)〉

という言葉を見つけました。

多糖質とは、化学的結合で結びついた多数の糖(単糖もしくはオリゴ糖)からなる
分子量の大きい高分子の重合体、そして粘液とは長い鎖状構造の多糖質です。
粘液は水と混ざり合うと半固形状になり、これが一般にゲルやジェルといわれるものです。
これを損傷や炎症を起こした部位につけると粘液保護の働きをし、皮膚へは保湿作用を与えます。



つまり、インフューズドオイルを作る過程で
色素や香り成分、有効成分と共に多糖類が抽出され、加熱することで科学的結合を促し
ゲルやジェルのような粘液質の成分がオイルに溶け出した。
と考えられます。

自然のハーブのなかにも、ウスベニアオイやリンデンなど粘液質を皮膚の保護に役立てるものもありますが
オイルをインフューズドすることで、化学的に肌を保護し保湿する成分を作り出し
それが〈粘り気のある泡〉となった可能性が高いようです。

そして粘液質によって、とろりとした肌あたりの柔らかい、保湿効果にすぐれた石けんができるようで
この成分は精油(エッセンシャルオイル)やハーブティーでは得られないものです。


と、なんとなく自分のなかで結論を見出し、ほっとしたところで moreメリッサのメイキングを


moreメリッサにも、メリッサの葉をアボカドオイルに浸したインフューズドオイルを使用しています。


水分にはメリッサの葉とウォッカでつくった薬酒を。


淡いグリーンのオイルに、苛性ソーダを加え濃いグリーンに変化した水分を加えて
ぐるぐるしていきます。
オイルから立ちのぼる、ほのかなメリッサの香りに期待が高まります。


ぐるくるしている間、ボウルからふわりと香るメリッサ

この時間があるから、石鹸づくりがやめられないのです。

いつも、このままでいいかな・・・と思いながらも
少しずつ少しずつ、様子をみながら香りを加えていきます

今回は、稀少なオイル メリッサ
レモングラスに似たシトラスの香り リツェクベバ(メイチャン)
オレンジの花精油 ネロリを加えました。



オイルにも水分にも、香りづけにもたっぷりのメリッサを練りこんだmoreメリッサ
軽やかで柔らかい泡立ちと、濃いメリッサの香り
メリッサ好きの方に是非使っていただきたい石鹸に仕上がりました。